砂漠の夜の幻想奇談


「………お人払いを」

低めの声で人払いを頼まれ、シャールカーンがドニヤやトルカシュを下がらせる。

部屋から出て行った彼らを確認して、王子はルステムを見つめた。

「これでいいだろう?」

しかし、ルステムは苦い表情で膝をついたまま。

「……大変申し上げにくいのですが……シャールカーン王子…」

彼の言わんとするところを察し、シャールカーンは目を見開いた。


「まさか、俺にも退出しろと?」

「…………ご無礼をお許し下さい」


その通りだと言われ、王子の表情が不機嫌なものへ変わる。

誰が出て行くか、と怒鳴りそうになった瞬間、アブリザ王妃がやんわり言った。

「シャール。非礼を承知で、わざわざこう言ってるんだもの。何かよっぽどの事情があるのでしょう。従ってあげなさい」

「母上…しかし…」

ニコニコ笑う母親と、腕の中にいるサフィーアを交互に見る。

彼の顔には「心配で堪らない」と書いてあった。


(シャール、大丈夫よ!)


真剣な目で伝えるサフィーア。

「私達は大丈夫だから、聞き分けてちょうだい。シャール」

譲らないアブリザ。

「っ……わかった。しばらく出ていよう」

とうとう折れたシャールカーンはサフィーアを椅子に座らせ、渋々退場した。