砂漠の夜の幻想奇談


「お知り合いですか!?姫っ」

「ええ、ルステム。サフィーア姫よ。……シャールカーン王子の…ご寵姫」

ノーズハトゥは悲痛な表情でサフィーアに向き直る。

「サフィーア姫。私がどうしてここにいるのかは…後生ですから、お尋ね下さらないで。お願いします…」

そして、深々と頭を下げた。


(ノーズハトゥ姫…)


ハシーシュの売買が密かになされている路地裏。

お忍びで来た様子のノーズハトゥザマーン。

無理矢理にでも女主人を連れ帰ろうとするルステム。


(もしかしなくても、姫は……)


ハシーシュに手を出しているのでは。

その考えに行き着いた時――。


「サフィーア!!!!」


唐突にシャールカーンの声が響いた。


(え?シャール!?)


振り向けば、市場に続く通りからこちらに向かって駆けてくる金髪王子の姿が。

「サフィーア!!良かった!!」

シャールカーンは勢い良くサフィーアに抱き着くと、これでもかと言うほど強く抱きしめた。