砂漠の夜の幻想奇談



(ノーズハトゥ姫…?)


声には出せないので、間近でベールの内側を覗き込む。

すると、ルステムがサフィーアに短剣を突き付けた。

「無礼者!!離れろ!」

吠えるルステム。

「どっちが無礼者だ?」

すかさずダハナシュが短剣の切っ先をグニャリと捩曲げた。

「なっ!?お前化け物か!?」

「まあ、人間ではないな」

「お前っ!!からかっているのか!」

白いルステムの頬が怒りで朱に染まる。

今にもダハナシュの首に手を伸ばし、そのまま絞め殺してしまいそうな雰囲気だ。


「やめなさい、ルステム」


そんな彼を制したのは、ベールの女性だった。


「サフィーア姫ですね?」


そう問うと、女性はベールを外した。

現れた素顔はサフィーアの予想通り、ノーズハトゥザマーンのものだった。