物知りなダハナシュの説明を聞きながら視線だけを動かし、通りを眺める。
すると、黒いベールを目深に被った女性が汚らしい店に入ろうとしているのを目撃した。
彼女もハシーシュを買いに来た客の一人だろうか。
ボンヤリ考えていると、その女性に向かって走ってくる身なりの良い青年がサフィーアの視界に入った。
「姫!!僕から逃げられると思いましたか!?」
青年はそう叫ぶと、黒いベールの女性の腕を拘束するように掴む。
「さあ、戻りましょう」
「いや…!!お願い、ルステム。見逃してちょうだい!」
女性の声を耳にして、サフィーアの心臓がドクンと跳ねた。
(あれ?今の声は…)
昨晩の宴にて、甘く恋歌を吟唱していた。
そう――彼女は…。
「ん?なんだ、お前ら。見世物じゃないぞ!」
ルステムと呼ばれた茶髪の青年がダハナシュとサフィーアを睨む。
にもかかわらず、サフィーアはベールの女性に近寄った。



