砂漠の夜の幻想奇談



(王宮に戻ったら、お金払ってもらうようにお願いしなきゃ…)


もちろんシャールカーンに。

彼なら菓子一つの微々たる代金など、心良く支払ってくれるだろう。

それはわかりきっているが、どんな風に会話をしようか、それが悩みどころである。

まだ怒っていると頼みづらい。

悶々としていると、ダハナシュが辺りを見回して声を低めた。

「ああ……まずったな」

彼は守るようにサフィーアの肩を抱いた。

「姫、サッサとここから出るぞ。この路地にはハシーシュ呑みが多い」


(ハシーシュ呑み…?)


「わからないか?大麻中毒者のことだ」


(大麻中毒者!?)


驚いて路地を見る。

言われてみれば、先程までいた市場よりも店には活気がないようだ。

通りの雰囲気も暗い。


(本当に…?)


「近頃のバグダードではハシーシュが流行りでな。こういう路地裏で売買されている」