砂漠の夜の幻想奇談


「疲れました。ええ…それはもう、疲れましたよ…。ですが貴方様の行く先ならば、例え地獄であろうとも異教徒の軍の中だろうともお供致しますよ…。文句を言いながら」

「最後の一言、余計じゃね?」

トルカシュがツッコミを入れるも、バルマキーは聞いちゃいなかった。

「嗚呼!なぜゾバイダ王妃はよりによってダマスへ左遷させたのでしょう!バスラだって良いじゃないですか!」

「左遷言うなよ!ダマスの太守になるってことは王様に信頼されてるってことだぜ!?」

「ダマスは軍事においても交易においても重要な都だからね」

シャールカーンの説明に文官バルマキーは弱々しく頷いた。

「わかっています。ですが…砂漠の移動は辛いです。陸路より、海路で行けるバスラの方が何十倍もマシですよ」