砂漠の夜の幻想奇談



(そうよね…。カシェルダがいるわけないのよね…)


心の安定剤であるカシェルダが恋しい。

そう思っていると、ダハナシュが顔を覗き込んできた。

「姫よ。本当に元気がないな。どうしたんだ?」


(べつに……)


シャールカーンにしたようにプイとそっぽを向いてやれば魔神はクスリと微笑する。

「まあ、理由などどうでもいいがな」

なら最初から尋ねるなと言ってやりたい衝動に駆られるも、サフィーアは自分を抑え、投げ出していた作業を再開させるべく編み物を手に取った。

しかし…。

「サフィーア姫」

ダハナシュの手によって没収される。


(何するの!?返してダハナシュ!)


取り返そうとする手を避けて編み物を長椅子に置くと、ダハナシュはサフィーアの身体を抱きかかえた。

「街へ出よう。遊ぶぞ」


(へ…!?)


「気晴らしだ」

そして、床を蹴る。

ダハナシュはふわりと浮き上がると、サフィーアを抱いたまま窓から空へ飛び立った。