砂漠の夜の幻想奇談


「お化け?ハッ、子供だな」

「あ!バカにしましたね!?本当だったら後悔しますよ!?」

旅が始まってもう五日は経った。

そろそろ疲れも出て来る頃だろうに、今日もこの年若い従者は元気だ。


「うるさいですよトルカシュ。少しはお黙りなさい。チビ」

二人の後方から、かったるそうな声が飛んできた。

「うるさいってヒデーな、バルマキー。俺はこの場を明るくしようとだな…」

「やかましいチビですね」

「チビ言うな!」


バルマキーと呼ばれた彼はシャールカーンの側近で、書記でもあり法官でもある。

トルカシュが武道派護衛係りなら、バルマキーは頭脳派教育係りといったところだ。

ちなみに彼はトルカシュを「チビ、チビ」言うほど背が高い。

これはトルカシュが低いというよりも、バルマキーの身長がひょろ長過ぎるのだ。


「疲れたか?バルマキー」

文官の彼には長旅はきついだろう。

シャールカーンは心配そうに尋ねた。