砂漠の夜の幻想奇談


ドニヤが部屋から出て行き、束の間、一人きりになる。

とうとうサフィーアは編み物の手を完全に止めてしまった。

ハァと、軽い溜息をこぼす。


(私…何してるんだろう…)


なんだか、頭の中がグチャグチャになってきた。

無意識に込み上げてくる涙を手で拭う。


(泣いてる暇なんか…ないのに)


グシグシと目を擦っていた時だった。

誰かに、そっと頭を撫でられた。


(え…?)


今、ここには自分一人しかいないはず。

ビックリして上向くとそこには…。


「姫、強く擦ってはいけません。赤くなってしまいますよ」


黒髪に青い瞳、やや褐色の肌。

少し大袈裟なくらいに自分を心から心配してくれる、優しい声。

いつも傍にいる、サフィーア専属の護衛官。


(カシェ、ルダ…?)


サフィーアの目の前には、穏やかに微笑むカシェルダの姿があった。