砂漠の夜の幻想奇談


「ブドゥール王妃様、お食事をお持ち致しました」

ブドゥール王妃付きの若い侍女が子羊のシチューがよそられた皿を差し出す。

ブドゥール王妃はそれを一瞥し受け取る――かと思いきや。


「このウツケが!!」


肌を叩くバシッという音がした。

「きゃああ!!」

「私は子羊の肉が嫌いだ!主人の好みも知らないなど言語道断!!」

どこに隠していたのだろうか。

ブドゥール王妃の手にはいつの間にか鞭が握られていた。

「申し訳ございません!申し訳ございません!」

皿を置き、床に手をついて深く頭を下げる侍女。

そんな彼女の背中に王妃は何度も鞭を浴びせた。


(ひ、酷いわ…!シャール、どうして誰も止めないの!?)


周りの人間は皆一様に見て見ぬ振りをしている。

まるで鞭打たれる侍女などいないかのように。

王様ですら何も言わない。

サフィーアはこの異常さに戸惑った。

怖くなって、すぐ横にいるシャールカーンの服をキュッと掴む。