砂漠の夜の幻想奇談


「お隣り、よろしくね」

不意に、サフィーアに声がかかる。

見れば隣の席にアブリザ王妃が着席していた。


(良かった。隣がシャールの母上で)


知らない人が多過ぎて緊張気味だったが、少し安心した。


(もう少し落ち着こう。大丈夫、大丈夫…)


隣にはシャールカーン。

後ろにはドニヤも控えている。

呪文のように心の中で「大丈夫」を繰り返していると、オマル王の声が聞こえた。

「ん?ブドゥールはまだか?もう始めるぞ?」

どうやら第一正妃のブドゥール王妃がまだ見えないようだ。

「待たずともよろしいのでは?遅れる方に非がございます」

ゾバイダ王妃がしれっと言った。

それもそうかと思い、杯を掲げる王様。


「アッラーは讃えられよかし!皆のもの、今宵は歓迎の宴によう集まってくれた。このひと時を大いに楽しもうぞ!我が息子シャールカーン王子の旅路をお守り下さったアッラーに栄光あれ!」