砂漠の夜の幻想奇談


アブリザ王妃はキョロキョロと周りを見回し、部屋の中にシャールカーンの側近数人しかいないことを確かめてから声を低めた。

「実はね、こっそり伝えたいことがあったのよ。まだ公表されていないことだから人目を気にしてしまって」

「……何ですか?」

ただならぬ雰囲気に目を細めるシャールカーン。

「それが、カンマカーン王子がね…」

言いかけた瞬間、タイミングを見計らったように入口から声が響いた。


「シャールカーン王子!宴の準備が整いましたゆえ、広間においで下さい」

使いに寄越された女奴隷が甲高い声で告げる。

「わかった。行こう」

答えてからシャールカーンは母親を見た。

「すみません母上、お話はまた後ほど」

「そうね。宴の主役が遅れては示しがつかないわ。お行きなさい、シャール」

「はい。サフィーアもおいで」


(え?あっ、ちょっとシャール!)


腕を引っ張られ部屋を出る。

彼らは宴の間に向かうべく回廊を進んだ。