砂漠の夜の幻想奇談


口は笑っているが瞳は真剣そのもの。

単なるセクハラ魔神かと思いきや、意外と使えるかもしれない。

シャールカーンはゴクリと唾を呑んだ。

「……わかった。許可しよう。けれど、その不自然な動きはやめてくれないか。人前で飛ぶのはよせ」

「いいぞ。人間らしく地を歩こうじゃないか」

快く了承するダハナシュ。

なら後の問題は外見だけだ。

シャールカーンは彼の格好を観察した。

黒髪にターバン、小綺麗な衣装。

背中に魔神独特の翼などは生えていないため、問題なし。

「よし。どこから見ても人間だな」

一人呟いていると、ダハナシュがサフィーアに呼び掛けた。

「サフィーア姫。今から俺は貴女の護衛官だ。よろしくな」


(え!?ダハナシュが!?)


突拍子もない展開に目を丸くするサフィーアの隣で、ソティリオが溜息を吐いた。

「ようやく出て行くのか…」

「初めて会った日以来、頻繁に遊びに来てましたからね」

苦笑するディノス。

「つーか居座ってたよな」

ニヤニヤ笑う魔神を横目に、レヴァンがダハナシュの行動を暴露した。


(ダハナシュが護衛官かぁ…。大丈夫かな…?)



色々と不安は尽きないけれど、旅は続く。

この夜からダハナシュを加えた一行は、それからも順調に砂漠を進んだ。

そして、良く晴れた日の午後、つつがなく平安の都バグダードへ到着したのだった。