砂漠の夜の幻想奇談


「ガチョウ…?」

言われて記憶が蘇る。

ダマスへ来る途中、賊を仕留めるのに十二羽のガチョウが手伝ってくれた。

「まさか、あの時のっ!」

「思い出した?あの時の人でしょ?かっこよかったから覚えてたんだ!」

はしゃぐコスティ。

その隣で次男のディノスが確認するように話し掛ける。

「サフィーア。口がきけないということは、始めたんですね。服作りを」

力強く頷く妹を見て微笑する十二人。

歳の近い兄達に「頑張れ!」と肩を叩かれ、サフィーアも笑顔になった時だった。


「相変わらず、王子方は姫に甘いなぁ。顔が緩んでいるぞ」

部屋の隅から聞こえた低い美声。

見れば、壁際に並んだ寝台の一つに魔神ダハナシュが腰掛けていた。