砂漠の夜の幻想奇談



 太陽が沈んだかと思うと、ポンと月が出る。

砂漠の旅にもようやっと慣れてきたここ数日、サフィーアは月の観察をするようになっていた。


(今日も綺麗)


限りなく黒に近い青色が空を包む中、ポツンと輝く白。

「月のように美しい」という表現があるが、その言葉が生まれた訳を目の当たりにしたようで、サフィーアは感動に震えた。


「何を見てるのかな?」

テントの中にいたシャールカーンが表へ出て来た。

絨毯の上に座っているサフィーアの隣で胡座をかく。

サフィーアは手を伸ばし、月を指差した。

「成る程ね。月を見てたのか」

納得したシャールカーン。

彼も夜空の主役を見上げ、その美しさを楽しむ。

「月を見てると、酒が飲みたくなるな」

呟いてから王子は後ろに控えていた護衛官を呼んだ。