砂漠の夜の幻想奇談


水のたっぷり入った革袋を受け取り、ベールをずらして口づける。


(ん~!生き返る感じがする)


喉の潤いに満足していると、前方にいたシャールカーンがこちらに馬を寄せてきた。

「どうしたサフィーア。疲れたか?」


(いいえ。大丈夫よ)


シャールカーンに首を振りながらドニヤに革袋を返す。

「そうか。疲れたらすぐテントを張らすからね。遠慮はいらないよ」

どうやらサフィーアの調子に合わせてくれるらしい。

これを聞いてトルカシュが喜んだ。

「やった!」

「ん?なぜお前が喜ぶんだ?」

「だって、王子に合わせるとペース速くて、疲れるったらもうー。ちんたら行ったら一ヶ月の道のりを十日で行くのやめません?」

シャールカーンが太守を任され、バグダードからダマスへやって来た時の旅路を思い出し、トルカシュはしみじみそう思った。

武官のトルカシュでも最終的にはへとへとになるのだ。

文官バルマキーに関しては言うまでもない。


「考えておこう」

ニヤリと笑ってから、また先頭へ。


この後、彼らは順調に砂漠へと進んだ。