砂漠の夜の幻想奇談


(俺のためとは、よく言ったものだな。体よくバグダードから俺を遠ざけようという魂胆が見え見えだ)

王となるためにダマスの太守となって経験値を積め、ということらしいが、明らかに建前だろう。

(俺を王位につけさせるつもりなど、初めからないくせに)


シャールカーンは長椅子に深く腰を落としながら隣にいる母親を見やった。

ゾバイダ王妃よりも美しい金髪美女アブリザ。

彼女は息子と離れ離れになるかもしれないこの提案に、口を挟むことなく沈黙を守っていた。

全ては王の御心のままに、といった様子だ。


「そうだな。我が領土のうち、最も重要な地点といえばダマス。うむ…。シャールカーンよ、私もゾバイダの提案に賛成だ。そちに異存はないか?」