砂漠の夜の幻想奇談


「兄上……ラマダーンも終わったことですし、僕はそろそろバグダードに戻ろうと思います」

「帰るのか」

「はい。すみません!本当なら兄上の傷が完治するまで留まるつもりだったんですが…バグダードにいる母から書簡が届き…」

どうやら早く帰って来いと急かされたらしい。

なら仕方がない。

シャールカーンは寛大な心で微笑んだ。

「俺に気を遣うことはないよ。見送りはできないが、カンの道中の安全を祈ってる。いつ発つんだ?」

「…今日です」

「そうか…。汝の上に平安あれ」

「ありがとうございます。兄上の上にも、平安がありますように。一日も早い回復を祈っております」


別れの挨拶を済ますと、カンマカーンは部屋から出て行った。

続いてカシェルダも外へ。

無意味かもしれないが、まだ捜索を終わらせるつもりはないのだ。

シャールカーンも気持ちは同じなため、引き止めはしなかった。