後々から考えれば、翌日の宴の席はシャールカーンの人生において運命の分かれ道であったに違いない。
それはゾバイダ王妃の言葉がきっかけとなった。
「此度の遠征、シャールカーン王子はようやってくれました。王様、何か褒美をとらせるのがよろしいかと」
女性の歌うたいの声に合わせて、宴の間に琵琶(ウーディー)の伴奏が鳴り響く。
――おお、戦士よ。すでに貴方様の猛々しさは、無上のツワモノどもの武勇をも凌ぎうる。貴方様の優れし優雅と美は我が眼の光…!
シャールカーンを称賛する詩句を聞きながら、上機嫌で酒に口づけるオマル王。
「おお…!そうだな。ゾバイダの言うことは最もだ!シャールカーンよ。何か望みはあるか?」
シャールカーンの傍で控えていた従者トルカシュが「王位を願うチャンスです!」と言うように目配せしてくる。
しかし王子はそんな従者のアドバイスを無視してこう言った。



