砂漠の夜の幻想奇談


すると、彼女も察してくれたようだ。

「あっ!これは…」


(どうしよう、ドニヤ!)


瞳で訴えれば、有能な侍女はすぐさま答えを出した。

「またお医者を呼んできます!それから身体を冷やすために水と氷…!タオルは清潔なのがそこにありますね。すみません、サフィーア様。お手をわずらわせるようですが、タオルで王子の汗を拭いて差し上げて頂けませんか?」


(わかったわ!)


頷いてタオルを持つサフィーアを見届けてから、ドニヤは自分の役目を果たすべく再び廊下へ。


彼女が走り去る足音を聞きながら、サフィーアはシャールカーンの額や首をタオルで優しく拭いていく。


(シャール、死なないで…!)


命に別状はないと言われたが、発熱のせいでどうなるか不安になる。

心の中で神に祈りながら汗を拭き取っていると、小さな声が聞こえた。


「……サ、フィー…ア」


シャールカーンのうわ言。


「…サフィ……ア…」


何度も呼ばれ、サフィーアはまた彼の手を握った。


(シャール!私はここにいるわ!傍にいるから…!)





この後、シャールカーンの高熱は五日間ほど続き、熱が落ち着いて彼がまともに喋れるようになったのは、負傷した夜からおよそ一週間後だった。