真夜中から朝方にかけて、シャールカーンはダマスで一番評判の良い医者から治療を受けた。
父のオマル王やカンマカーンはお抱えの医官を持っているが、日頃健康体で病気とは無縁の彼は決まった医者を傍に置いていない。
ゆえに町医者に頼るしかなかった。
カンマカーンの医官を借りてもいいのだが、ゾバイダ王妃やダリラとも交流のある医官に進んで我が身を任せるなど、恐すぎる。
「ご安心下さい。命に別状はございませんよ」
空が仄明るくなってきた頃、治療を終えた医者がにこやかに言った。
彼は替えの包帯や塗り薬などをテーブルに置くと、王子の平安を祈って帰って行った。
(シャール…)
今、シャールカーンはぐっすり眠っている。
サフィーアは力の入っていない彼の手をキュッと握り締めた。



