砂漠の夜の幻想奇談


「明日は面倒なことになりそうだな…」

ボソリと呟くシャールカーンに、従者トルカシュはゴクリと唾を飲み込んだ。

「ま、まさか…ゾバイダ様がまた何か、おっしゃったりするんですかね…?」

「可能性は高い。あの人がこのまま引き下がるとは思えない…」

ゾバイダ様とは父王の正妃で、弟カンマカーンの母親だ。

彼女は何かにつけてシャールカーンの立場を危うくさせようとする。

今回のペルシャ遠征もシャールカーンを司令官にと薦めたのは彼女だ。

司令官となり遠征に失敗すればシャールカーンの好感度はがた落ち。

死んだら死んだで構わない。

全ては自分の息子、カンマカーンの王位を確実なものにするため。

「ふふ…それにしても、俺が無傷で帰還した時のあの女の表情…いい見世物だったな。口は閉じられていたが、死ねばいいのにと顔に書いてあったぞ」

あからさまな敵意にもシャールカーンは動じなかった。

それどころか、笑ってみせた。

「あまりゾバイダ様を挑発しないで下さいよ?後が怖いです」

「ああ。わかってるさ」

シャールカーンは余裕そうな表情を浮かべてみせた。