砂漠の夜の幻想奇談


バキータが後ろ脚で立ち上がり、サフィーア目掛けて爪を振り下ろしてきた。


(きゃああ!!!)


反射的に横へ逃げ、転がるように扉の傍へ。

すんでのところで切り裂かれるところだった。

心臓がバクバクと鳴る。


バキータを見れば、前脚を壁につけグルルと唸っていた。


(またあんなふうに襲われたら…!)


死の恐怖にガクガクと震える足。


「サフィーア!?」


そんな時だった。

救いの声が耳に届いたのは。


(シャール…?)


鉄格子越しに彼の顔を見る。


(シャール!!!!)


震えていた足に力が入った。

「サフィーア!待ってろ!すぐに開ける!」

壁にかかるカギを取り、急いでカギ穴に差し込む。

バキータが石壁を爪で引っ掻く嫌な音が響く中、ついに扉は開かれた。