砂漠の夜の幻想奇談



(やった!)


相手の気配が遠ざかったため、サフィーアは急いで目隠しの布を外した。

視界に映るは、ランプの仄かな明かりと…。


(あっ!!あの人ね!!)


こちらに背を向け、廊下を逃げて行く黒い影。


(逃げられちゃう!捕まえなきゃ!!)


自分を襲った犯人をみすみす逃がしてなるものか。

サフィーアは後先考えずに黒い影を追いかけた。


相手の背中を観察しつつ走る。


(あんまり背が高くない。痩せてるみたいだし……女の人?)


服は黒一色で、頭から足のくるぶしまで覆われている。

ゆえに性別の判断はしづらかった。


(もう少し…!!)


距離が徐々に縮まっていたその時、急に犯人が立ち止まった。

暗い中よく見ると、どうやら扉を開けているようだ。


(あそこは…!!)


扉の先は地下への階段。

バキータがいる檻に続いている。

何の躊躇いもなく階段を下りていく犯人に、サフィーアは迷った。


(罠、かしら…?)


一瞬そう思ったが、地下へ逃げたということは袋のネズミに等しいということ。

階段の前でしばし立ち止まってから、サフィーアもゆっくり地下へ下りて行った。