砂漠の夜の幻想奇談



 サフィーアは薄暗い廊下を一人走っていた。

天井から吊り下がるランプの淡い光を頼りに、侍女が休んでいる小部屋を目指す。

そこにドニヤがいる。

自分の寝室からあまり離れていないため、何事もなく辿り着けるだろう。

そう思っていたが――。


(えっ?きゃ!!)


いきなり後ろから肩をグイと掴まれた。

バランスを崩したと同時に、視界を黒い布で覆われる。


(な、何!?)


わかったことは、何者かに後ろから目隠しをされたという事実。


(逃げなきゃ!!)


サフィーアの本能が身体を動かした。

とっさに足を暴れさせ、後ろにいる人物の下半身を蹴りつける。

「うぐっ!」

どうやら彼女の足が痛いところに当たったらしい。

その人物は呻きながらサフィーアから離れた。