砂漠の夜の幻想奇談


「そうか…。良かった。しかし、ならなぜ――」

言葉は最後まで続かなかった。

いきなりシャールカーンが窓辺の方を振り返る。


(シャール?)


窓の外を睨みつける彼は、緊張した様子で静かに護身用の短剣を構えた。

「サフィーア、カシェルダのところへ行くんだ」

囁かれた瞬間、窓辺に現れた人影。

一人ではない。

四、五人はいる。


(あれは…!?)


「早く行け…!!」


考える間もなかった。

シャールカーンの声を合図にサフィーアは駆け出した。

転がるように寝台から降り、カシェルダが待機している廊下へと走る。

後方から聞こえるのは、刃のぶつかり合う音。


「女一人に六人か」

シャールカーンは暗殺者達を見回し、忌ま忌ましげに舌打ちした。

六対一はきつい。

しかし、殺らなければ殺られる。