砂漠の夜の幻想奇談



(シャールの顔、近い!)


闇夜のせいでハッキリ見えないのが救いだ。

それでもサフィーアは、熱を持つ頬を意識して顔を俯けた。

「俯かないでよ。せっかく夜這いしに来たのに、表情が見えなきゃつまらない」


(夜這い!?)


まさかの単語に勢いよく顔を上げる。

すると、至近距離で微笑するシャールカーンにまた鼓動が跳ねた。


「なんてね。何もしないよ。廊下でカシェルダが聞き耳立ててるだろうし、すぐに戻るつもりだ」

それを聞いてサフィーアはあからさまにホッとした。


「ただ……気になったことがあるんだ」

サフィーアの黒髪に触れながら王子がゆっくり語り出す。


「昼間……泉から戻ってから、一度も目を合わせてくれなかったね」


ピクリと反応するサフィーアの肩。

「理由を聞いても良いか?」