一言も喋らずにヒンヤリとした廊下を進む。
その通路は明かり取りの窓がないため昼間でも薄暗く、それなりに涼しい。
ダリラは前を行くドニヤの背中を見つめながら情報の整理をしていた。
(あのサフィーアという娘はコンスタンチノープル出身か…。文字が書けるとなると、単なる町娘ではないねぇ。親が法官か、聖職者か、もしくは…)
教育熱心な王族か。
カンマカーンが「姫」と呼んでいるが、あれは「シャールカーンの寵姫」という意味だ。
王族だという確証はない。
ゆえに鎌をかけてみたが、良い反応をしていた。
サフィーアを庇うように割り込んできたドニヤ。
彼女の不自然な態度を見てダリラは「何かある」と感じた。
(つつけば色々と出て来そうだねぇ)
楽しそうに老婆は笑う。



