砂漠の夜の幻想奇談


あの時――シャールカーンと目が合った時、サフィーアは自分の中の「女」を意識した。

彼は「男性」で、自分をあんなふうに褒めてくれたことが嬉しくて。


(嬉しい…!?)


自分の中にあった思いに驚愕し、編み物を取り落としそうになる。


(嬉しいって何!?私、嬉しかったの!?)


あの場面は「見るな変態!」とドニヤのように怒るのが普通だ。

しかし、不思議とサフィーアに怒りはなかった。

むしろ覗き見たシャールカーンの感想を嬉しく思っているのだから呆れてしまう。


(ハァ……ダメだな、私)


何と無く気づいていた。


(シャールを好きになるつもりなんて、なかったのに…)


あれだけキッパリ求婚をはねつけた手前、なかなか自分の気持ちを素直に認められなくて。