砂漠の夜の幻想奇談



 さて、シャールカーンとカシェルダが手を組んでダハナシュを探し回っている間の午前中、サフィーアはいつも通り窓辺の傍で編み物に励んでいた。


「だいぶ形になってきましたね」

下手なりに頑張っている。

主の努力を見て、ドニヤはお茶でも用意しようかと立ち上がった。

とその時、サフィーアが編み物の手を止め、手で自分の顔に風を送った。

今日は午前中といえども日差しが強い上、風がない。

集中しているせいもあり、身体が熱くなったのだろう。


(お茶より、風を送って差し上げようかしら…。あっ、それよりも…!)


良いことを思いついたドニヤはサフィーアに向き直り提案した。

「サフィーア様、一度編み物を中断して湯浴みを致しませんか?」

ただでさえ火照っているのに湯浴みは遠慮したい。

サフィーアが躊躇っていると、ドニヤが人懐っこい表情で微笑んだ。

「湯浴みと言っても浴場(ハンマーム)ではなく、中庭の奥にある泉に参ります。ようは水浴びですね。気分がスッキリ致しますよ」

水浴びと聞いてサフィーアの瞳が輝いた。


(入りたいわ!)


期待する眼差しを向けられサフィーアの意思を察すると、ドニヤは早速水浴びの準備をし始めたのだった。