砂漠の夜の幻想奇談


「マイムーナ?」

聞き覚えのない名前にシャールカーンが首を捻る。

「知らないか。お前を贔屓にしている女の魔神だ。サフィーア姫の兄君達をガチョウにした張本人でもある」

ダハナシュは長椅子から身を起こすと、滑るような動作で一瞬にしてシャールカーンに迫った。

「お前の寝顔もじっくりと愛でられているぞ。俺が姫を愛でているようにな」

「なっ!?」

クスクス笑い、ふわりと飛ぶ。

空中を自由に移動できる魔神は、日の光が差し込む窓から外へと姿を消した。


「消えた…。一体、なんだったんだ…?」

冷や汗をかきつつ短剣を下ろすシャールカーン。

カシェルダは厄介者がいなくなるとすぐサフィーアに駆け寄った。

「姫!!ご無事ですか!?」

元気よく頷くサフィーアにホッとする。

「まだ奴が近くにいるかもしれません。外の見回りをしてきます」

もちろん、見つけたら駆除するために。

「カシェルダ、付き合うよ」

珍しくシャールカーンもカシェルダと行動を共にした。