砂漠の夜の幻想奇談


「うわ…ご機嫌斜めじゃね?」

数歩後退りするトルカシュとは反対に、ギリギリまで檻に近寄るカシェルダ。

彼は少し思案してから言った。

「中に入りたい。扉を開けてくれ」

「はあ!?マジで言ってんのか!?死に行くようなもんだぜ!?」

「大丈夫だから、開けてくれ」

仰天するトルカシュを安心させるように微笑む。

その笑顔と、見えない威圧にトルカシュは負けた。

「……わかったよ。けど、自己責任だからな?」

「君も存外くどいな」

廊下の壁にかかっている鍵を手に取り、檻の扉を開ける。

トルカシュは外に留まり、カシェルダのみ中に入った。

「気をつけろよ」

バキータが脱走するのを防ぐため扉を閉めて注意を呼びかける。

けれど、カシェルダは目の前のホワイトタイガーに集中していて聞いていなかった。