その日の夜、寝台の中でサフィーアはモザイク画に書かれていた兄達の名前を思い出そうとやっきになっていた。
「えーと…ニコラオスでしょ、ディノスでしょ、ソティリオでしょ。あと…ヴラディミロス、エリアス、ゼノン…。マリノスに……あれ?今何人目だっけ?」
十二人は多い。多過ぎる。
「母上も父上も、ちゃんと兄上達の名前言えるのかな?」
探すとか言っておいて全員の名前を正確に覚えきれない自分が情けない。
サフィーアはシーツにくるまって、再びぶつぶつと唱え始めた。
「エリアス、ゼノン…マリノス。それから…ラザニスだっけ?アドノス…?あれ?」
すると、不意に低い男性の声が頭の中で響いた。
――アドニス、ラザロス、ネストル、レヴァン、コスティだ
「あ、そうだよ!それで全員…て、今の声、誰…?」
起き上がって辺りを見回すも、部屋には自分以外誰もいない。
「空耳…かな?」
空耳にしては鮮明だったが、無理矢理そう納得して横たわる。
そんなサフィーアを眺める窓辺の黒い影が、ニヤリと笑んだ。



