砂漠の夜の幻想奇談


逃げていくカシェルダを呆気に取られて見守っていたサフィーア。

そんな彼女に気づき、シャールカーンが窓辺に近づいてきた。

「ふふ、カシェルダは大人気だね。あれは大変だ」

タオルで汗を拭き取り苦笑する。

「一介の武官が様づけされてるなんて……彼は将来、大物になりそうだよ」

シャールカーンの言葉に一同がうんうんと頷いた時だった。


「カンマカーン王子。お勉強のお時間でございます」

サフィーアの部屋にカンマカーンの乳母ダリラが音もなくやって来た。

「え、もうそんな時間?」

「左様でございます。今日はコーランの解釈を行いますよ」

そう言いながら近寄ってきたダリラをサフィーアはまじまじと観察した。


(あら?よく見ると、顔に傷痕が…?)


近くで見て初めてわかった。

老婆の顔には全体的に無数の傷痕がある。

容姿が酷く見えるのは、切り傷のようなそれらが原因のようだ。


「わかった。今行くよ。では、兄上、サフィーア姫。僕はこれで」

「うん。頑張れ」

「はい!」

兄に励まされ俄然やる気になったカンマカーン。

彼はニコニコしながらダリラと共に部屋を後にした。