「サフィーア様、あれはクールと言うんですよ」
(クール…?)
「それに彼は素っ気ないだけではございません。ちゃんと天然で女性を落としてらっしゃいます」
(え?それって、どういう…?)
サフィーアの疑問にはすぐ答えが得られた。
まだ中庭にいるカシェルダを観察していると、一人の侍女が彼にタオルを渡した。
「ありがとう。君は、確か昨日もいたな」
「は、はい!ナグマといいます」
緊張しているのか、声が裏返るナグマにカシェルダは微笑を向けた。
「ナグマ…。夜の星、という意味か。美しい名だな」
微笑みながらこんなことを言われてクラリとこない女性がいるだろうか。
カシェルダ本人は意図していないが、このちょっとした褒め言葉と微笑が原因で人気が上昇しているのだ。
「カシェルダ様!私はノズハといいます!」
「私はザハラです~!」
「はいはい!私は――!」
ナグマに乗じて名前を覚えてもらおうと他の侍女達まで喋り出すものだから、さあ大変。
「いや、あの……す、すまないが…失礼する!」
女性の勢いに気圧され、カシェルダはふらつく身体に鞭打って中庭から退散したのだった。



