砂漠の夜の幻想奇談


「彼もイスラム教徒なんですか?サフィーア姫がクリスチャンですから、てっきり護衛官の彼もそうなのかとばかり…」

尋ねられたが、サフィーアには明確に首を振ることができなかった。

彼女も今の今までカシェルダをクリスチャンだと思っていたのだ。

祖国では一緒に教会の礼拝に出席していたから疑いもしなかった。


(でも、断食してるってことは…イスラム教徒なのよね…?)


よく考えてみれば、サフィーアはカシェルダのことを何も知らない。

護衛官になる前は軍にいて、強かった。

そんな僅かな情報のみゆえ、彼がどこ出身でいつが誕生日で家族は何人など、個人情報は全く知らないのだ。


(命懸けで護衛をしてくれてるのに、私はカシェルダのこと何も知らなかったのね…)


後で色々聞いてみようか。

まずは何を尋ねるべきかと考えながら編み物に視線を移した時だった。


「それにしても……カッコイイですね。カシェルダって」


ドニヤがポツリと呟いた。