砂漠の夜の幻想奇談



 今日の決闘は、まだ幾分か涼しさが残る午前中に開始された。

敏捷(ビンショウ)な身のこなしで間合いを詰め切り掛かるカシェルダと、舞うような動きでヒラリと刃を避けるシャールカーン。

そんな中庭の光景を自室の窓辺からチラチラと見るサフィーア。

ただ今、服を編んでいる真っ最中なのだが、どうしても中庭が気になって集中力が欠けてしまう。

そんなサフィーアのことを傍で見守るドニヤが注意するのは、もうお決まりのパターンだ。

「サフィーア様、手ですよ!手を動かして下さい!」

窓の外に意識を持って行かれたせいで止まっていた手を注意された時、廊下の方から足音が聞こえた。


「失礼します、サフィーア姫」

部屋にやって来たのはカンマカーン。

「ご一緒してよろしいですか?」

兄が決闘中なため暇を持て余しているのだろう。

笑顔で頷いたサフィーアを見て、王子は嬉しそうに近寄ってきた。