砂漠の夜の幻想奇談


「ですが、あの乳母にはご注意下さい。王子と違って腹黒く、ずる賢いんです。贔屓にしているゾバイダ王妃のために他のご側室を陥れた過去がございまして、周りからは“災厄(ワザワイ)の母”と恐れられています」


(災厄の、母…?)


確かに見た目は好印象ではなかったが、それは言い過ぎではないか。


(側室が許される国には、多かれ少なかれ女同士の戦いがあって当たり前って、前に婆やが言ってたような…)


異国の話をしてくれた婆やのことを思い出す。


(まあ、言い過ぎにしろ、ドニヤが注意しなさいって言ってるんだもの。そうした方がいいのよね)


「見かけたら無視が一番ですよ」

ドニヤのアドバイスを聞きながら手を動かす。


こうしてサフィーアは就寝ギリギリまで糸紡ぎに励んだのだった。