そもそもバキータは十年以上も前にインドから連れて来られた虎で、珍しさゆえバグダードの王宮で飼育されていた。
性格はとても凶暴で、飼育係を襲って重傷を負わせるのは日常茶飯事。
しかし、なぜか第一王子のダウールマカーンにだけは懐いていたという。
彼以外このバキータを御せられる者はおらず、第一王子が行方不明になってからは誰一人として懐かれることに成功した人間はいなかった。
「ダウール兄上がいなくなって、ずっと檻に閉じ込めていたせいか、最近さらに凶暴さが増してしまったんです。この前はとうとう…死者が出ました」
今までは重傷患者が続出しても死には至らずに済んでいた。
しかし、ついに死者が出た。
そのため、さすがに王宮内もざわめいた。



