砂漠の夜の幻想奇談


「ふむ……それもそうか。参ったね、どうしようか」

無言で睨みつけてくるカシェルダを苦笑して見つめながら、シャールカーンは都合のいい提案をした。

「ひとまず勝負はお預けってことでは…納得いかないかな?」

「不服だ」

躊躇いなく答えたカシェルダ。

とその時、そんな強気の護衛官にサフィーアが勢いよく抱き着いた。

「ひ、姫!?」

突然のことに困惑しつつサフィーアの顔に視線を移す。

彼女は必死に首を横へ振り、離すまいというようにギュッと腰にしがみついていた。


(ダメよ、カシェルダ!お願いだから止めて!)


声がなくとも、表情と態度からサフィーアの気持ちがカシェルダには理解できた。


「………致し方ありませんね」


頑張って自分の腰にしがみついている年下の姫を愛しく思いながら、カシェルダはサフィーアの髪を優しく撫でた。


「決闘は中止します。ですから、泣きそうな瞳をしないで下さい」