呆れるシャールカーンの近くで再び獣が吠えた。
大人のホワイトタイガーの咆哮に怖じけづき、周囲で見物していた召使達が慌ててこの場から去っていく。
「こんな人の多い場所にバキータは危険だね。鎖はしてある?」
「もちろんです。兄上」
よく見るとホワイトタイガーの首には鎖が巻かれており、その鎖を伸ばした先には屈強な兵士がいた。
彼はカンマカーンの護衛としてバグダードからお供してきた兵士の一人で、バキータが暴れようとする度に鎖を引っ張っては獣の動きを制限している。
「バキータを檻に入れておけ。誰かが襲われる前にね」
「はっ!」
兵士は王子の命令を実行すべく慎重に鎖を引っ張り、バキータと共に中庭を後にした。
「さて…」
危険が消え去り、再びカシェルダに向き合うシャールカーン。
「決闘の続きを――」
そこへバルマキーがすかさず割り込んだ。
「シャールカーン王子、せっかくカンマカーン王子がいらっしゃったのです。これから歓迎の宴を開くべきかと…」



