砂漠の夜の幻想奇談


正直、シャールカーンは内心コノヤローと思ったが、声に出せば情けない気がしたため歯ぎしりに留めた。

カシェルダの青い瞳を睨みつけるも、効果なし。

逆に強い目力で威圧される。

「覚えておけ。シャールカーン・イブン・オマル・アル・ネマーン。この国の王子だろうが何だろうが、指図は受けない。姫が帰りたいと願うなら俺は護衛官として、それを叶えるまで」

サフィーアと引き離される。

今、自分が負けるとはすなわち、そういうことだ。


(この程度なのか…?)


シャールカーンは自問した。


(この程度でサフィーアを諦めるほど、俺は弱いのか…?)


刃を向けられ屈しかけている状況で、自分の命とサフィーアを秤にかけてみる。


(……違うだろ…!)


彼は首筋に当たる短剣の刃を手でグッと握り締めた。


「俺にだって……譲れないものはある!!」


手の平が傷つこうとも構わない。

力をこめて刃を押し返す。