砂漠の夜の幻想奇談


自分を連れ帰るべくカシェルダが来てくれた。

心強い護衛官の言葉に首を縦に振るサフィーア。


(帰る!帰りたいわ!)


しかしそう思った瞬間、ふとシャールカーンの顔が脳裏をよぎった。

未練、だろうか。

好きという自覚はないのに、なぜか彼の存在が心の枷となる。


(あれ…?どうして、シャールのことなんか…)


散々、好きだ惚れたと言われてウンザリしていたはずだ。


(そうよ!ずっとシャールに振り回されてばかりでウンザリなんだから!)


けれど、サフィーアは気づいていなかった。

心の片隅に、シャールカーンの求愛を心地好く感じる自分がいることに。


無自覚のまま納得し、サフィーアがカシェルダの手を取った時だった。


「どこへ帰るって?」


静かな怒りを孕んだ声が聞こえた。