砂漠の夜の幻想奇談



 突然部屋へ侵入してきた青年に、サフィーアは目を丸くした。


(カシェルダ!?)


頭にターバンを巻き、イスラム風の衣装を着ているが、その青年は間違いなくサフィーアの護衛官カシェルダだった。


「姫!ご無事ですか!?お怪我は?ご病気は?何もお変わりないですか!?」


肩を掴まれての質問責めにサフィーアは唖然としたが、何とか頷いてみせた。


「はあ……良かった。本当に申し訳ございませんでした。護衛官でありながら姫をあんな下種の手に渡してしまうなど……私は護衛官失格です」

ホッとしたのも束の間、酷くうなだれるカシェルダに対し、サフィーアは安心させるよう彼の背中をポンポンと叩いた。


(カシェルダも、生きてて本当に良かった…。貴方のこと、ずっと心配してたのよ…)


「姫?ああ…喋れないのですね。服作りを始められたのですか」

カシェルダはサフィーアが手にしている糸紡ぎの道具を一瞥すると畏まって言った。


「よくお聞き下さい、姫。今ならここから逃げ出せます。共にコンスタンチノープルへ帰りましょう」