故郷が恋しい。
サフィーアのホームシックに気づかない(気づいていても気づかない振りをする)シャールカーンは、長椅子から立ち上がると彼女に向き直った。
「じゃあ俺はモスクに行ってくるよ。みんな屋敷から離れるけれど、ドニヤを置いていくから…」
するとサフィーアはブンブン首を振った。
そしてドニヤの背中を押す。
「なんだい?ドニヤはいらない?」
(ドニヤだって礼拝に出たいでしょ?いつも私と居残りは可哀相だわ。連れてってあげて)
サフィーアが目でそう訴えると、シャールカーンは苦笑した。
「愛されてるねドニヤ。君の女主人は君を心配してくれてるよ」
「サフィーア様、ご心配には及びません。私はそれ程熱心な信者ではないので、ちょっと礼拝をサボったくらいで良心は痛みませんよ」
言ってはみたものの、サフィーアは頑なにドニヤの背中を押し続けた。
少しの間、二人は互いの主張を曲げなかったが、シャールカーンに早く決めろと急かされ、とうとうドニヤが折れた。
こうしてサフィーアのみが執務室に残ったのだった。



