砂漠の夜の幻想奇談


(ひゃあ!?手元が狂うからいきなり抱き着かないで…!)


声に出して思いっきり怒りたいのはやまやまだが、いかんせん声を出したら全てが台なしになる。

サフィーアはグッと我慢した。


と、その時。


――アッラーは偉大なり~!!


外から、歌うような男性の声が聞こえてきた。


――アッラーは偉大なり~!!礼拝に来たれ~!!



「アザーンだ。礼拝の時間だね」

シャールカーンが名残惜しげにサフィーアから腕を離す。


(アザーンか。まだ聞き慣れないわ…)


礼拝の時刻になると礼拝に来るよう呼びかける声が町中に響き渡る。

その呼びかけをアザーンというのだと数日前に理解したばかりのサフィーアは、日に五回も聞こえる伸びやかな大声に未だ違和感を感じていた。

キリスト教の教会では鐘の音が礼拝の合図だったため、アザーンを耳にする度にここは異国なのだと思い知らされる。