砂漠の夜の幻想奇談


「他に情報は?全て吐け!」

「他!?えーと…ああ!そっそれに、あいつは王に売るみたいなことを言ってた!」

「王に…?」


カシェルダは目を細めた。


(王に献上するなら、紹介状を貰いに一度は太守のもとへ行くはずだ)


そうなるとサフィーアの居場所に対し、可能性は三つにしぼられる。

一つは、まだ奴隷商人の屋敷にいること。

次に、太守に買われてしまった可能性。

最悪なのは、王のいるバグダードに連行中という場合だ。


(三つに限定できたとはいえ、まだ確かなことはわからない。街で聞き込んでみるか)


頭の中で情報を整理しつつ、カシェルダは突き刺していた短剣を引き抜いた。

男が汚い声で叫ぶ。


「もうお前に用はない」


言うが早いか、カシェルダは血に塗れた刃で男の首を掻っ切った。


「ぐっ…あっ!!」


喉から血を零しながら苦痛に呻き倒れる男を、カシェルダは冷めた目で見つめていた。

すると、不意にズキンと頭部が痛み出した。

「っ…」

頭にターバンを巻いて止血はしているが、やはり殴られた部分が痛む。


「姫…」


短剣に付着した血を男の服で拭いつつ、カシェルダは大切な少女を思った。

「早く…貴女のお傍に…」