深夜、ダマスの路地裏で、カシェルダはターゲットの男を見つけた。
相手はひどく酔っ払っているらしく、千鳥足でフラフラと歩いている。
一人だ――。
カシェルダは闇に紛れて忍び寄ると、奇襲の如く飛び掛かり相手の胸倉を掴んで建物の壁に叩きつけた。
「ぐへっ!!テメェ!な~にすんだっ!」
「あの方はどこだ」
「はあ!?な~んだテメェー!だれんこと言ってやがる!」
「貴様が砂漠でさらった女性のことだ!深い闇夜を閉じ込めた漆黒の髪。清んだ瞳の煌めきはサマルカンドの青。無邪気で愛らしい俺の大切なサフィーア様だ!!忘れたとは言わせん!」
この酔っ払い男にとって、彼女を忘れるなど有り得ないことだった。
なんせ今、こうして旨い酒をたらふく飲めたのは彼女が高値で売れたおかげだったからだ。



