砂漠の夜の幻想奇談


「それは…御側室をお迎えした、ということでしょうか…?」

恐る恐る尋ねるカカーンに対し、シャールカーンは大袈裟に肩をすくめて見せた。

サフィーアを見つめたまま。


「いや、彼女は凛と咲き誇る可憐な薔薇でね。なかなか手折らせてくれないんだよ」


耳に恥ずかしいセリフが流れ込む。


「だが、そんなところも愛おしい…」


計算したのか、色気を含んだ妖艶な微笑で本命を見つめたシャールカーン。

あまりの美しさと妖しさに、サフィーアは真っ赤になったまま固まってしまった。


「フフッ、いい反応」


「た、太守様…?」


目の前にいる自分を見ず、女奴隷の方へ視線をやる王子を訝しみ、カカーンの娘が小首を傾げる。


「奥ゆかしいんだ。俺の焦がれる天女は。あっさりと散ってしまいそうな君と違ってね」