砂漠の夜の幻想奇談


「俺に恋した?」


ズバリ声に出して問えば、彼女は恥じらうように視線を泳がせて俯いてしまった。

その態度を見てシャールカーンは軽く溜息をついた。


「カカーン殿も“それ”が狙いかな?」


“それ”とはつまり、結婚。

わざとらしく咳ばらいをしてから、カカーンは改まった調子で言った。


「……失礼ながら、太守様にはまだ御正妃様も御側室様もいらっしゃらないとか…」


「確かに妻はいない。けどね、好きな子がいるんだよ」


この発言にドキリとしたのはカカーン親子だけではなかった。


(シャール…)


彼から目がそらせない。

サフィーアが王子の一挙一動をドキドキしながら見守っていると、王子本人とバッチリ視線がぶつかった。

一瞬シャールカーンは目を見開いたが、すぐに余裕そうな笑みを浮かべた。